2015.07.17 | FP赤井の生活マネー情報
日本人は新しい○○が好き?
住宅ローンアドバイザーとして活動していると、
「このマンションは自分に買えるか」「どのローンが良いか」
というご相談は多くいただきます。
しかし「私たち家族は自宅を購入すべきか否か」という相談は
意外と少ないものです。
誰かプロの人に相談したい、と思うタイミングは「購入を決めてから」
発生するからなのでしょう。
自宅購入が前提で生活を送り、ある時期に「じゃあこの物件を買うか」
と夫婦で決断する。
その後、「どうローンを借りるか、返すか」という時に、
初めて専門家のアドバイスが欲しくなるようです。
つまり「マイホーム取得」は、私たち日本人の大前提となっています。
一国一城の主となって、初めて一人前と認められる、
という風潮もありますよね。
そもそも日本人は「持ち家志向が高い」というイメージがあります。
でも実際の持ち家比率は、先進国でも決して上位ではありません。
1位、2位のブルガリア、リトアニアでは持ち家比率がなんと97%!
「ハンガリー」92%、「シンガポール」90%と続き、
ロシア、イタリア、ノルウェーなどが70%~80%で上位に入ります。
日本はというと60%で、トルコやスウェーデンとならぶ世界21位。
イギリス、オーストラリア、カナダ、アメリカなどの65~69%に比べると
低い順位です。
これは全年齢のデータなので、「自分で家庭を持つまでは実家で両親と暮らす」
といった国民性の場合、数値は高くなる傾向があるでしょうし、
20代単身世帯が多い国では、数値は低くなります。
一方、家に関するデータで日本がダントツで一位になるランキングがあります。
「それは新築の比率」
住宅流通量を日米で比較すると、人口の差の通りアメリカのほうが
大きくなりますが、注目したいのは新築の数。日本が109.4万戸なのに比べ、
アメリカは55.4万戸。
2.5倍の人口差にも関わらず、年間に流通する新築住宅は
アメリカは日本の半分程度です。
全体の中での中古比率は、日本13.5%、アメリカ90.3%。
全体量が近いイギリス、フランスと比べても、
日本は圧倒的に新築市場がメインだと言えます。

平成24年土地白書(国土交通省)
もちろん様々な理由はあります。
木造住宅の多い日本に比べて、欧米ではコンクリート造が多い、
という構造上の違いもありますし、
歴史、景観の保全を重視する文化性の違いもあります。
ただし、そうも言っていられない時期に来ています。
全国の空き家戸数は平成25年時点で820万戸あり、
空き家率は13・5%といずれも毎年上昇し続けています。
今後も空き家は増え続けるはずで、野村総合研究所の予測では
平成35年に空き家は1397万戸、空き家率は21%に達するとされています。
このような状態で、新築メインの住宅マーケットが拡大していくはずはありません。
先月5月には国土交通省が「空き家対策」を促すガイドラインを
策定したばかりですが、国も空き家を減らす、つまり中古住宅の
有効活用制度を進めています。
まだまだ整えなければならない制度は多いと思いますが、住宅購入相談の現場でも
中古住宅取得のための優遇制度は拡充していると感じます。
自宅の購入を検討する時、検索や広告に頼れば当然のように新築ばかり
目についてしまいますが、優遇制度を使った中古物件のメリットにも目を向け、
柔軟な思考で理想のすまいを手に入れたいですね。