2019.08.17 | FP赤井の生活マネー情報

まだ始めてない?つみたてNISAで投資デビューを

「老後資金2,000万円問題」の影響を受け、改めて自身のマネープランを意識した方も多いのではないでしょうか。

この不足額はあくまで平均的な数値なので「2,000万円」に固執する必要はないのですが、やはり豊かなセカンドライフを迎えるためには、より多くの額を準備しておいたほうが良いのは言うまでもありません。

さてそこで改めて注目されているのが、NISAやiDeCoなどの投資の非課税制度。テレビやウェブなどのメディアで目にしない日はありませんが、皆さんは活用していますか?「そろそろ何かしなきゃ…」という方に向けて、今回は特に「投資初心者向け」と言われるつみたてNISAに的を絞って解説してみたいと思います。

ふたつのNISA

NISA(少額投資非課税制度)は、「一般NISA」と「つみたてNISA」とに分けられます。

2014年からスタートした一般NISA(少額投資非課税制度)は、年間元本120万円までの株や投資信託で得られた利益が、5年間非課税となる制度です。専用口座数は2018年末時点で1,150万件を超えていますが、実際の稼働率は60%程度であったり、利用している70%以上が50代以降の年齢層だったり、現役世代の意識を「貯蓄から資産形成へ」と向けるには少し力不足でした。

そのような中でより使いやすく、より長期的な資産形成を促すことを目的として2018年から始まったのが「つみたてNISA」です。このつみたてNISA、いままでの一般NISAと何が違うのでしょうか。

一般NISAとつみたてNISAの違い

主な相違点を一覧にしてみました。

つみたてNISAのポイントは以下の通りです。

ポイント① 年間非課税投資額 40万円

ポイント② 非課税期間 投資した年から20年間

ポイント③ 運用方法は「積立方式」のみ

ポイント④ 投資対象は、一定の要件を満たす「長期投資に適した投資信託」に限定

ポイント⑤ 途中引出しはいつでも可能

①一般NISAの年間上限額が120万円であるのに対し、つみたてNISAでは40万円です。②そのかわり非課税期間が20年。最大800万円の投資で得る利益が、非課税となります。

③一般NISAではまとまった額の投資が可能でしたがつみたてNISAではその名の通り積立のみです。※一般NISAでも積立投資が可能です

④非課税となる投資対象も条件があり、毎月分配型でない、売買手数料が無料など「長期投資に適した投資信託」に限定されます。2019年7月の段階で、約160本のファンドがその対象となっています。

⑤目的は「老後資金」には限らないので、引出はいつでも可能です。子どもの学費や自宅購入の頭金のために使っても何ら問題はありません。

なぜ「つみたて」なのか

そもそも「投資」というと、まとまったお金を運用する人がするものだというイメージがありますが、「つみたて」方式を取ることで時間分散となり、リスクを軽減する効果が期待できます。それをドルコスト平均法といいます。

基準価格にかかわらず、毎回同じ額を投資することにより、安いときには多い口数を、高いときには少ない口数を買い付けることとなり、結果として一括で購入するよりも平均買付価額を低く抑える効果が見込めます。

言葉にするとちょっとわかりづらいですね。では次の3つの異なる値動きをするファンドを見てみましょう。

手元に100万円あるとして、どのファンドに投資すれば最も利益が出ると思いますか?

「ファンドA」と答える方が多いと思います。もちろん正解。一目瞭然です。手元資金が100万円の場合、1口1,000円のファンドを1,000口購入できます。基準価格が1,000円だったファンドが10年間で3,000円になったので、運用残高は300万円になりました。3倍です。

しかし「つみたて」の場合、決してAが正解とはなりません。一度に100万円を投資するのではなく、年間10万円を10年間に分けて投資するとします。その間、ファンドの基準価格は変動しますが、その価格に関わらず一定金額を購入するとなると、毎年購入する「口数」が変わることになります。

「高いときには少なく、安いときには多く」ファンドを購入することになるので、どんどん値上がりするAの場合は、購入する口数が最も少なくなります。最終的に基準価格が高くても、買っている口数が少ないので、さほど大きな利益にはなりません。

では一番儲かったファンドはどれでしょうか。それは「ファンドB」です。どんどん下降している間、安くたくさん買えています。それが最終的に当初の額に戻っただけで、資産は倍になっています。勝手にタイミング良く投資していることになるのです。

ファンドCへの投資は損のはずなのに…?

さて、実はこの話のキモは「ファンドC」です。

Aが上がり続けることが事前にわかっていれば、誰でも一括でAに投資します。また、一時下がるが絶対将来復活することが分かっていれば、誰でもBを定期購入します(もしくは底で一括購入します)。

しかし購入時に、AやBがこんな動きをするとは予想できたでしょうか。答えはNOです。

どんな優秀なファンドマネージャーでも、上がり続けるファンドを運用する事は不可能ですし、また意図的に下降させて、再度上昇させる運用もありえません。「上がったり下がったりする」Cが最も現実的ではないでしょうか。最終的に最初の額を下回っていても、それまでの間に「高いときには買い控えし、安いときにたくさん買う」ことを実践できているので、損失どころか、若干ですが利益が出ています。

この「上がったり下がったり」(これをボラティリティといいます)を味方にするのが「ドルコスト平均法」と呼ばれる投資方法なのです。このドルコスト平均法においては「ほどほどのボラティリティがありつつ、全体的には手堅く上昇している」ファンドが最も優秀と言えます。

金融機関をどう選ぶか

「つみたてNISA」はこのドルコスト平均法で運用ができます。また長期投資に適している、と金融庁が認めた商品しか選択できないので、ある程度手堅い運用が期待できます。

「よし、そろそろやってみるか!」と思った時、次に悩むのは金融機関選びです。

通常の投資信託であれば、「金融機関にとってのオススメ商品」を勧められがちな銀行や証券会社で購入することは避けた方が無難です。しかしつみたてNISAなら、商品も絞られているので、窓口でいろいろ質問しながら始めても良いと思います。「自宅や職場から近い」「メインバンク」という理由で選んでも構わないでしょう。

40万円に縛られる必要はない

また年間120万円の一般NISAに比べ、年間40万円は少し物足りないという方もいるかもしれません。その場合、なにも非課税枠以内に縛られる必要はないと思います。つみたてNISA上限以上の金額は、課税口座である「特定口座」で運用してください。

利益に対する約20%の税金がもったいない!という方もいます。でも思い出してください。 あまりにも少なくて忘れがちですが、 預金利息からも約20%の税金が引かれているのです。どうせ納税するなら、大きく利益を出して、たくさん納税したいものです。


※ドルコスト平均法は将来の収益を約束したり、相場下落時における損失を防止するものではありません。

※事例の数値はあくまで仮定であり、将来の成果を約束するものではありません。また購入に関する手数料や信託報酬は考慮していません。

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