2020.03.17 | FP赤井の生活マネー情報
投資ビギナーは、いま撤退すべきなのか
中国武漢を発端としたコロナウィルスによる新型肺炎が、世界中に広まっています。
日本国内でも連日感染者拡大のニュースが流れ、官民問わず多くのイベントが中止となり、アミューズメント施設なども休業を余儀なくされています。トイレットペーパーやティッシュペーパーが店頭から消え、保存食が品薄になるなど日常生活にも影響が広がっており、いまだ収束する気配はありません。
この新型肺炎の拡大は金融市場にも影響を及ぼしており、日経平均、ダウ平均株価指数とも騰落を繰り返し、円高も進行している状況です。
SARS流行時を振り返る
今回の新型肺炎で思い出されるのは、2002年の重症急性呼吸器症候群(以下SARS)です。
SARSは2002年11月に中国広東省で症例が報告され、本格的に問題視され始めたのは2003年1月ごろ。中国、香港、北アメリカを中心に感染が拡大し世界中を震撼させましたが、その後感染スピードは収まり、7月にWHOが封じ込み成功を宣言しました。
当時の金融市場を振り返ってみると、
- 2002年中盤の日経平均は11,000円前後
- 2002年後半の日経平均は9,000円台前半
- 2003年前半のSARS拡大時は、消費落ち込みの影響もあり8,000円台前半まで下落。
- 2003年7月以降には事態は収束し9,000円台に、
- 2003年9月には10,000円台と回復していきました。
その後も緩やかに上昇基調が続き、2004年の前半には再び月間の平均株価が11,000円台となっています。17年も前なので現在と単純に比較はできませんが、少なくとも
- 感染拡大中には経済は停滞
- 収束後は株価も回復する
と言えるのは間違いなさそうです。
投資初心者はどうすべきか
しばらく株価は低迷し、その後回復することが予想できるのであれば「下がり切った時に株を買って、上がったら売れば儲かる」ことになります。しかし私たち投資初心者は
- いつが「下がり切った」タイミングなのか
- どこまで上がれば売ってよいのか
- そもそも何を買えばよいのか
など分からないことだらけです。混乱に乗じて慣れない投資を始めたところで、
「これから回復すると思って買ったが、下がり続けている」「一度上がって喜んでいたが、売り時が分からずウロウロしているうちに別な理由で暴落した」ということになりかねません(というか、きっとなります)。
ではどうすべきか。それは、「投資信託をコツコツ買い続ける」。
「NISA」や「iDeCo」で積み立て投資をしている方なら、「止めずに続ける」。
まだの方は、「今から始める」。
こんな時期に慣れない投資に手を出すな、と前述したばかりですが「積み立て投資」は別です。
金融市場が停滞している、まだまだ下がる、これから回復する、どのタイミングでも構いません。積み立て投資なら「下がったり上がったりすること」こそが安定的に資産を増やすことに繋がります。この法則を「ドルコスト平均法」と言います。ここで、投資経験者と投資初心者に分けて、すべきこと、すべきでないことをまとめます。
■経験者
やって良いこと:今をチャンスと捉え、回復が見込まれる商品を購入
やってはいけないこと:まだまだ下がるかも、という恐怖心から売却
■初心者
やって良いこと:積み立て投資を始める
やってはいけないこと:いまが底だからと、慣れない商品を一括購入
小さなアクションで積み立て投資は始められる
投資信託などで積み立て投資を始めるには、証券会社で新たに口座を開設する必要があります。それ自体大変な作業ではありませんが、もっと簡単に始められる場合もあります。
それは、職場が「確定拠出型年金(401k)」を採用している場合。基礎年金・厚生年金の上乗せとして、自分で運用先を選べる企業年金のこといいますが、かなり多くの方がこの運用先を「預貯金」のままにしています。
「よく分からないから面倒くさい」もしくは「年金をリスクにさらしたくない」というどちらかの理由だと想像できますが、この運用方法を預貯金から投資信託に変えることは簡単にできますし、前述した通り上下すること(リスク)自体が年金を増やすことにつながるのです。
401kをまだ「預貯金」で運用している方は「NISA」や「iDeCo」の前に、まず運用先を変えてみましょう。
「つみたてを止めるな!」
SARSの時と比べても今回の新型肺炎は世界の広範囲で拡大しているようですし、場合によっては収束するまでにさらに長い時間がかかるかもしれません。それまで経済活動が停滞することは避けられませんが、自分の資産づくりまで停滞させる必要はありません。長期的視野に立って、コツコツ「積み立て投資」を続けましょう。