2020.10.03 | FP赤井の生活マネー情報

最近よく聞くTOBってなんだろう?

9月28日、NTTがNTTドコモを完全子会社化することが報じられました。一般株主が持つ30%強の株式を、 株式公開買い付け(TOB)で取得することになります。

さて経済ニュースでよく聞くこの「TOB」。買付する側がされる側の「経営権を握る」という目的で行われますが、そのアプローチは複数あるようです。

そもそもTOBとは

株式公開買い付けを意味するTOBは、Take Over Bidの略です。市場での売買ではなく、事前に価格や買い取る株数を明示して、市場外で株主から買い集めることをいいます。

金融商品取引法では、「発行済株式の1/3以上を取得する場合は、事前に買い付けの意思を公表しなければならない」と定められているため、事前の明示が必須となっています。

完全子会社化のため

前述のNTTとドコモのように、上場している親会社が、同じく上場している子会社を完全子会社化する時にTOBが行われます。最近ではソニーが子会社のソニーフィナンシャルに対して、また伊藤忠商事がファミリーマートに対して実施したTOBが話題になりました。これらは親子上場を解消し一体化することで、競争力を高めたり意思決定を統一するために行われることが多いようです。

資本関係のねじれを解消するため

親子上場している場合、子会社の価値が親会社の価値を超えてしまうことがあります。この場合、親会社が安く買収されることによって、価値の高い子会社まで経営権を握られてしまう恐れがあります。これを防止するという目的でもTOBが行われることがあります。

友好的TOB

これらの親子関係でなくとも、いままで資本関係のなかった上場2社が、合意の上でTOBに応じることがあり、それを友好的TOBといいます。最近の事例ではヤフーによるZOZOの買収。ヤフーはZOZO創業者の前澤友作氏の持つ株式とTOBでの株式を合わせて50.1%を取得し、ZOZOを子会社化しました。

敵対的TOBとは

一方で相手の合意を得ずに買収を仕掛けるTOBを、敵対的TOBといいます。最近話題になったコロワイドが大戸屋に対して行った買収劇が、まさしく敵対的TOBの典型です。かつて堀江貴文氏率いるライブドアが、ニッポン放送に仕掛けた敵対的TOBも話題になりました。これは前述したような資本関係のねじれを突いて、子会社だったフジテレビの経営権まで取得しようとしたために、大問題に発展しました。

持っている株がTOB対象に!どうすれば?

所有している株がTOBの対象となったときはどう対処すべきでしょうか。「TOBの対象になったので売らなければ」とも思いがちですがそうとも限りません。そのTOBがどういった性質のものなのかで、対応は変わってきます。

■上場解消になる場合

ドコモのように完全子会社を目的としている場合、TOB成立イコール上場廃止を意味しますので、所有し続けるメリットはゼロです。

■友好的TOBの場合

一般的にTOBの買取価格は、公表時の株価+αのプレミアムを付加した額(例えば+30%など)で設定されます。売買手数料もかからないので、売却はメリットといえます。一方で「この買収は、買取価格以上の価値を生むかもしれない」と判断するのであれば、TOBに応じないという選択もありです。

ZOZOの例だと、TOBの買付価格は1株あたり2,620円でした。その後一時1,200円台まで下げましたが、その後のステイホーム需要から2020年10月現在で3,100円台まで急回復しています。つまりTOBに応じず1年間保有していれば、より大きい利益を生んだことになります。

■敵対的TOBの場合

前述のライブドアの事例も含め、日本では敵対的TOBが広く市場から支持されることは稀で、TOBの成立事例はあまり多くありません。ただし大戸屋の場合、大株主だった創業者相続人がコロワイド側に味方するという、お家騒動が絡んだことによって敵対的TOBが成立しました。

いずれにしても合意のない買収なので、社内モチベーション低下の可能性や、新経営陣による前向きな改革の可能性など計れない部分も多いため、TOBに応じるメリデメは一概には言えません。

株主にとっても大きな判断を迫られるTOB。もし当事者になった時は、表面的な報道に惑わされず慎重な姿勢で臨みたいですね。

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